川村 湊(かわむら みなと、1951年2月23日 - )は、日本の文芸評論家。法政大学国際文化学部名誉教授。

来歴

北海道網走市生まれ。北海道砂川南高等学校を経て、1974年法政大学法学部政治学科を卒業、株式会社大中入社。大学在学中に柄谷行人の教えを受けた。1978年株式会社水産社入社。1980年、「異様(ことよう)なるものをめぐって─徒然草論」が群像新人文学賞の優秀作に選ばれ、文芸評論家として活動を開始。

1982年韓国・東亜大学校文科大学日本語日本文学科専任講師、1985年同助教授、1990年法政大学第一教養部助教授を経て1994年教授、1999年法政大学国際文化学部教授。国際文化学部学部長。2017年退任し、名誉教授。

人物

  • 1991年、湾岸戦争への自衛隊派遣に抗議し、柄谷行人、中上健次、津島佑子、田中康夫らとともに『湾岸戦争に反対する文学者声明』を発表。
  • 1993年から2010年3月まで17年間にわたり毎日新聞に文芸時評を連載。平野謙の13年の記録を破る。
  • 群像新人文学賞史上唯一の古典文学評論による受賞者であるが、その後韓国での教職経験から在日朝鮮人文学や、南洋・樺太などの旧植民地文学へと関心を移した。また補陀落や牛頭天王など民俗学へも関心を広げた。

親族

  • 妻は翻訳家の川村亜子(1951年 - 2017年)。法政大学文学部日本文学科卒で、1982年から1986年まで韓国の東亜大学で教えた。
  • 長男の川村ミサキはIT企業の経営者。

受賞歴

  • 1980年、「異様(ことよう)なるものをめぐって─徒然草論」で群像新人文学賞
  • 1995年、『南洋・樺太の日本文学』で平林たい子文学賞
  • 2004年、『補陀落ーー観音信仰への旅』で伊藤整文学賞
  • 2008年、『牛頭天王と蘇民将来』で読売文学賞

著書

単著

  • 『川村湊評論集』全4巻 国文社
(1)『異様の領域』1983年)
(2)『批評という物語』(1985年)
(3)『音は幻』(1987年)
(4)『隣人のいる風景』(1992年)
  • 『「酔いどれ船」の青春―もう一つの戦中・戦後』(講談社 1986年)
  • 『わたしの釜山』(風媒社 1986年)
  • 『ソウルの憂愁』草風館 1988
  • 『アジアという鏡―極東の近代』(思潮社 1989年)
  • 『紙の中の殺人』河出書房新社 1989
  • 『異郷の昭和文学―「満州」と近代日本』(岩波新書 1990年)
  • 『言霊と他界』(講談社、1990年、講談社学術文庫 2002年)
  • 『近世狂言綺語列伝 江戸の戯作空間』福武書店 1991
  • 『マザー・アジアの旅人 シンクレティズム紀行』人文書院 1992
  • 『南洋・樺太の日本文学』(筑摩書房 1994年)
  • 『海を渡った日本語―植民地の「国語」の時間』(青土社 1995年)
  • 『戦後文学を問う―その体験と理念』(岩波新書 1995年)
  • 『「大東亜民俗学」の虚実』(講談社選書メチエ 1996年)
  • 『満洲崩壊―「大東亜文学」と作家たち』(文藝春秋 1997年)
  • 『満洲鉄道まぼろし旅行』(文藝春秋 1998年/文春文庫 2002年)
  • 『戦後批評論』講談社 1998年
  • 『文学から見る「満洲」―「五族協和」の夢と現実』(吉川弘文館 1998年)
  • 『生まれたらそこがふるさと―在日朝鮮人文学論』(平凡社選書 1999年)
  • 『作文のなかの大日本帝国』(岩波書店 2000年)
  • 『風を読む水に書く マイノリティー文学論』講談社 2000年
  • 『ソウル都市物語―歴史・文学・風景』(平凡社新書 2000年)
  • 『妓生―「もの言う花」の文化誌』(作品社 2001年)
  • 『日本の異端文学』(集英社新書 2001年)
  • 『魂を揺さぶる人生の名文』光文社 2002
  • 『補陀落―観音信仰への旅』(作品社 2003年)
  • 『韓国・朝鮮・在日を読む』インパクト出版会 2003
  • 『物語の娘 宗瑛を探して』講談社 2005 (片山廣子の娘)
  • 『アリラン坂のシネマ通り 韓国映画史を歩く』集英社 2005
  • 『村上春樹をどう読むか』作品社 2006
  • 『牛頭天王と蘇民将来伝説 消された異神たち』作品社 2007、増補版2021
  • 『温泉文学論』新潮新書、2008
  • 『文芸時評 1993-2007』水声社、2008
  • 『闇の摩多羅神 変幻する異神の謎を追う』河出書房新社、2008、新装版2017
  • 『狼疾正伝 中島敦の生涯と文学』河出書房新社、2009 
  • 『あのころ読んだ小説―川村湊書評集』勉誠出版 2009
  • 『異端の匣―ミステリー・ホラー・ファンタジー論集』インパクト出版会 2010
  • 『福島原発人災記―安全神話を騙った人々』現代書館 2011
  • 『原発と原爆 「核」の戦後精神史』河出ブックス 2011
  • 『震災・原発文学論』インパクト出版会 2013
  • 『海峡を越えた神々 アメノヒボコとヒメコソの神を追って』河出書房新社 2013
  • 川村湊自撰集』全5巻 作品社、2015-16  
第1巻 古典・近世文学編
第2巻 近代文学編
第3巻 現代文学編
第4巻 アジア・植民地文学編 
第5巻 民俗・信仰・紀行編 
  • 『紙の砦―自衛隊文学論』インパクト出版会、2015
  • 『戦争の谺:軍国・皇国・神国のゆくえ』白水社、2015 
  • 『村上春樹はノーベル賞をとれるのか?』光文社新書、2016
  • 『君よ観るや南の島 沖縄映画論』春秋社、2016
  • 『銀幕のキノコ雲 映画はいかに「原子力/核」を描いてきたか』インパクト出版会、2017
  • 『津島佑子 光と水は地を覆えり』インスクリプト、2018
  • 『ホスピス病棟の夏』田畑書店、2018
  • 『ハポネス移民村物語』インパクト出版会、2019
  • 『新型コロナウイルス人災記 パンデミックの31日間』現代書館、2020
  • 『熊神』河出書房新社 2024

共著

  • (山折哲雄)『宗教のジャパノロジー――シンクレティズムの世界』(作品社, 1988年)
  • (網野善彦)『列島と半島の社会史――新しい歴史像を求めて』(作品社, 1988年)
  • (松山巌、宇野亜喜良)『ミステリー・ランドの人々』 (作品社、1989年)
  • (成田龍一・上野千鶴子・奥泉光・イ・ヨンスク・井上ひさし・高橋源一郎)『戦争はどのように語られてきたか』(朝日新聞社, 1999年)
  • (網野善彦・吉本隆明)『歴史としての天皇制』(作品社, 2005年)

編著

  • 『ふるさと文学館 海外編』 (ぎょうせい、1995年)
  • 『中島敦――父から子への南洋だより』(集英社, 2002年)
  • 『文学史を読みかえる(5)「戦後」という制度――戦後社会の「起源」を求めて』(インパクト出版会, 2002年)
  • 『思想読本(6)韓国』(作品社, 2002年)

共編著

  • (鄭大均)『韓国という鏡――戦後世代の見た隣国』(東洋書院, 1986年)
  • (佐野良一)『ソウルソウルソウル―原語で歌う88』 (集英社文庫、1988年)
  • (大江志乃夫・浅田喬二・三谷太一郎・後藤乾一・小林英夫・高崎宗司・若林正丈)『岩波講座近代日本と植民地(全8巻)』(岩波書店, 1992年-1993年)
  • (諏訪春雄)『アジア稲作民の民俗と芸能』(雄山閣出版, 1994年)
  • (諏訪春雄)『アジアの霊魂観』(雄山閣出版, 1995年)
  • (諏訪春雄)『アジア山民海民の民俗と芸能』(雄山閣出版, 1995年)
  • (諏訪春雄)『アジア稲作文化と日本』(雄山閣出版, 1996年)
  • (諏訪春雄)『日本人の出現――胎動期の民族と文化』(雄山閣出版, 1996年)
  • (諏訪春雄)『訪れる神々――神・鬼・モノ・異人』(雄山閣出版, 1997年)
  • (守屋貴嗣)『文壇落葉集』(毎日新聞社、2005年)

校閲

  • 『太白山脈』全10巻(趙廷来(著),尹学準(監修),神谷丹路(翻訳),安岡明子(翻訳),川村亜子(翻訳),筒井真樹子(翻訳)、ホーム社 1999年-2000年)

脚注

外部リンク

  • 川村湊公式ウェブサイト

川村 巌 (19312015) • FamilySearch

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